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「双子の星」 [童話]

「双子の星」という童話があります。

賢治の弟、清六さんの『兄賢治の生涯』(ちくま文庫)によると
大正7年の夏に、兄賢治から「蜘蛛となめくじと狸」という童話と一緒に
この話を読んで聞かせられた、とあります。

大正7年とは、その3月に賢治が盛岡高等農林を卒業し、
保阪嘉内が理由も告げられずに、除名処分となった年です。

賢治は嘉内をかけがえのない友と信じ、
二人で同じ願いを立て、
お互いを分身のように感じていたことは
賢治の手紙からも伺えます。

「双子」とは、賢治と嘉内のことに重ねあわせたとみても
決して的はずれではないと思います。

そう思いながら読んでみると
彗星にだまされて海に堕ちたふたり、とは
何の説明もなされないまま学校を除名処分となり
深い失望と落胆のうちに盛岡を去らねばならなかった嘉内のことであり
それを知って、我が事のように悲嘆にくれ、
自分も卒業などせぬといって
家族を困らせた賢治のことのように見えてきます。

なぜなら、海の彗星=くじらに、
「天からの追放の書き付けを持って来たろうな」といわれて
「僕らはそんなもの持たない」と答えるのです。
「どんな悪いことを天上でして来たやつでも書き付けをもたなかったものはいないぞ」

つまりは「書き付け」とは理由であって
嘉内は「理由」なき追放を受けたというのが、
賢治や友人たちの意識であり、またそれが事実だったのでしょう。

先生たちの間を父と一緒に懇願してまわっても、
誰一人明確にその理由を言わず、
ましてや処分が撤回されることはなかったのです。

海蛇がやってきて「あなた方はどうしたのですか。悪いことをなさって天から落とされたお方ではないように思われますが」と言い、
鯨が彼等は書き付けも持っていないと言うと
「お前には善いことをしていた人の頭の上の後光が見えないのだ。割ることをしたものなら頭の上に黒い影法師が口をあいているからすぐわかる」と言って
海の王様のところに連れて行き、
双子は竜巻に乗って天上に帰ることができるのです。

 嘉内さん、あなたは何も悪くない。
 いわれのない誤解をうけて、あのようなことにされてしまった。
 しかし、嘉内さん、
 私たちは再びどんな困難にも立ち直って
 私たちがなすべきこと、人々のまことの幸せを求める道を
 進んでいこうではありませんか。

この童話は、賢治から嘉内へのメッセージだと
私には思えて仕方がありません。

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