So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

『忍剣花百姫伝』全7巻 越水利江子 [本]

越水利江子さんは主に児童文学・ヤングアダルトなどを手がけている作家さん。

作品を読むたびに感じるのは
どれも大変読み応えがあること。
一応子ども向けなので、易しくわかりやすい言葉で書かれていますが
行間に込められているもの、広がるものは
ジャンルを超えて計り知れません。

この作品『忍剣花百姫伝』もまさにそうで
「子どもの読むもの」と侮るなかれ。
表紙や挿絵がアニメ風なので、もしかしたら敬遠される方や
軽く見てしまう方があったらそれはたいへんもったいないことだと思います。

時代は戦国乱世。
「五鬼」とよばれる五つの忍者の城があった。そのひとつ白鳥城が一夜にして滅ぼされる。
さらに八剣城(やつるぎじょう)も城落、四歳の花百姫(かおひめ)は行方知れずとなる。
みなしごとなっても力強く生きぬく花百姫。やがて姫に引き寄せられるように再び集結する八人の忍剣士たち。力を合わせ、それぞれの能力を果たすことで霊剣・天竜剣をはじめとする九神宝をまもり命がけで正体不明の敵と戦う・・・

ファンタジーをはじめとする物語のいいところは
読者自身の問題や現実の状況にも置き換えることが可能で
それらを解決するヒントや心の在り方、
自己の活力や希望に変えることが
できることではないでしょうか。

実際私は、今まで読んできた物語からたくさんのものを得てきたし
そこに描かれているのが「真実」「本当のこと」だと感じることがよくあります。


忍びの者たちが使う秘術、
遠く見えないはずの物を見たり聞いたり、
瞬間移動したり、時空を行き来したりなど
一見、非現実的のようですが
人間の能力は計り知れず
現実の世界でも、説明のつかないことが起こったり
何かを感じたりします。

花百姫がたった一人で戦うときにも
寄り添って一緒に戦う影。
それは何を意味するのか。
愛と信頼によって他の誰かに支えられた心のことではないのでしょうか。

そして胸に突き刺さり次第に強く大きくなる燐光石とは。

世界を破滅に向かわせる恐ろしい悪魔の兵器。
地獄の火炎で焼き尽くす閃光。
このシリーズを読んでいるときに起きた3月11日・東日本大震災と
忌まわしい原発事故は
物語と重なるどころか
まるでこれは今の日本で起きていることそのものではないかと
戦慄すら覚えました。

でも、主人公・百花姫をはじめとする登場人物たちは
時にお互いに不信に陥り反目することがあっても
それぞれの底にあるのは同じ願い。
本当の敵、戦う相手を見抜くべき切磋琢磨しながら助け合い
力を合わせて強く生き抜いていく姿に
人間に必要なのはどんな時にも決して希望を失わないことであり
いま私達に問われているのは諦めないことだと教えてくれます。

そして一番たいせつなこと。
それはどんな人にもその人にしかできない役割があること。
例えば一見愚かに見える「醜草(しこくさ)」という者は、
気が弱く満足に戦うことはできないけれど、傷ついた人を癒す力がある。
万能な人間はおらず、それそれが自分にできることをせいいっぱい努力し
その力を合わせることで何倍何百倍の力となる。
すべての物事は、そうやって動いていく。
世の中に、必要でない人間なんていない。

とにかく、ドキドキはらはらしながら楽しく読める物語、
そのなかにたくさんの宝物が詰まっている本。
この本に出会えたことは幸せなことです。

こんな今の世の中だからこそ
読んでみて欲しい一冊です。


さてここからはおまけ。

この物語には「真言」が出てきます。
危機せまったとき、剣士たちが唱えるのですが
たとえば「おんばやべいそわか」「のうまくさらばたたぎゃていびゃく・・・」など。

インドから伝わった梵語が、日本でもまじないの言葉として
お経とはまた別に広まっていたということでしょうか。

なんだ~、これっってジョージ・ハリスンが唱えて歌っていた
「マントラ」と同じだったんだ…と妙になっとく。


そして賢治の作品

  「早春」

   黒雲峡を乱れ飛び  技師ら亜炭の火に寄りぬ

   げにもひとびと崇むるは  青きGossan銅の脈

   わが索むるはまことのことば

   雨の中なる真言なり


にある「真言」もこれなんだ。
と今更気づいたわけです。

というのも私はこの「真言」をどういうわけか
まことのことばと言う意味で「まこと」と読んでしまっていたからです。
(あながち間違いでもない?)


そんなこともあって、前の記事でも書いたように
「密教」やそれにからんだ歴史というものに興味を持ち
本を読んでみたりもしているところです。

点でしか把握できていなかったことが
結びついて線や面あるいは立体的にたち現れてくるのは
とても面白いことでもあります。
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。